西宮北口 糖尿病週間② インスリン発見の奇跡とその物語「ミラクル」

インスリン発見物語 - 糖尿病患者を救ったミラクル -  -
インスリン発見物語
糖尿病患者を救ったミラクル

西宮北口 西宮ガーデンズにある内科・糖尿病内科・代謝内科・循環器内科のいわもと内科クリニック院長 岩本です。


本日紹介する「ミラクル」という本は、1型糖尿病と診断されたアメリカのエリザベス・ヒューズをめぐる物語です。当時、糖尿病は死を意味していました。唯一の治療法であった飢餓療法を受けた11歳のエリザベスは、体重が20kgになり、骨と皮の状態になってしまいます。


同時に、遠く離れたカナダのトロント大学では、外科医のバンティングとその助手ベストが、たった8週間の研究期間で、膵臓の抽出物が血糖を下げることを発見します。翌年1922年には、1型糖尿病の少年レナード・トンプソンに初めて投与され、劇的な効果を示し「インスリン」と命名された奇跡の薬を開発します。その功績は大いに称えられ、翌年バンティングはノーベル生理学賞を受賞。インスリン発見から、たった2年後のことでした。


エリザベスは、世界で初めて製品化されたインスリンの投与を受け、奇跡の恩恵を享受します。見事に彼女は回復し、最高裁歴史協会の代表まで務め、生涯にわたり多大なる社会的貢献をおこない74歳の人生を全うします。

本書はエリザベスの生涯を通じて、当時治療法がなかった患者の苦しみや悲しみが描写され、同時に死を宣告された状態から奇跡の生還を果たした患者とその家族の喜びや幸せがつづられています。いかにインスリンが世紀の大発見であったかを改めて認識させられるノンフィクション物語です。

 

癌が不治の病として考えられている現在、個人的には、がん免疫療法でノーベル生理学賞を受賞した本庶佑先生とイメージが重なります。

画期的な医薬品の創造には、いつの時代にも産学連携が欠かせないこと、そして患者さんへの情熱が絶対に欠かせないことを痛感させられる物語であり感動と涙のドラマが本書にはつづられています。

 

今だからこそ、おすすめの本です。

 

追記

本書を出版するにあたり、少しだけお手伝する機会をいただけたことを監修の門脇孝先生、訳者の綱場一成氏に、この場をお借りして深謝申し上げます。